事例
相談前
長男と同居していた母親(父親は20年前に死亡)が死亡して,兄弟三人が相続人となりました。
しかし、長男は、自身が母親の経済的援助として毎年80万円を10年間渡し続けてきたこと,弟2人の大学進学も自分の経済的援助のおかげである(長男の最終学歴は高校卒業)と考えたことから、3人均等な遺産分割に難色を示しました。
そのため、弟2人が弊所に遺産分割の交渉の依頼をしました。
相談後
依頼を受けた弁護士は家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、その中で、長男の主張に対してきちんと客観的な証拠を提出するよう求めました。
その結果、長男が主張する毎年80万円を10年間にわたって母親に支払ってきた援助金のうち110万円以外は確認できないことがわかりました。
また,長男は、母親の医療費を150万円,介護サービス料を60万円払ってきたと主張していましたが,確認できたのは医療費75万円,介護サービス料25万円だけでした。
母親の遺産を調査した結果,預金8万円,土地600万円,建物130万円の合計738万円でした。
そして、長男の寄与分は証拠から確認できた210万円(110万円+75万円+25万円)とし、
特別受益は申立人の二男は大学入学金15万円と1年間の授業料25万円の40万円が相当と判断されました。
三男については,月5万円の仕送り4年分240万円と,4年間の授業料180万円を合計した420万円が相当と判断されました。
そこで、調停案として下記の提案がされました。
具体的な分割方法について,預金8万円,土地600万円,建物130万円の合計738万円,加算特別受益 40万円+420万円,控除寄与分210万円,みなし相続財産988万円とする。
計算方法は
みなし相続財産×法定相続分3分の1≒329万円
申立人二男分 329万円―40万円-60万円=229万円
申立人三男分 329万円―420万円―60=-151万円
相手方長男 329万円+210万円+120万円=659万円
葬儀費120万円は相手方の長男が支払っている。
分割方法
相手方長男がすべての遺産を取得して,申立人らに対して代償金を支払うこととすると,代償金の額は79万円となる(遺産総額738万円―相手方分659万円)。
調停の中で相手方は和解案として申立人双方に100万円ずつ支払う提案もあったことを考慮して,申立人二男に60万円,三男に20万円支払うとの方法での解決案が提示されました。
検討の結果解決案を呑むことで調停和解が成立しました。
弁護士からのコメント
調停では相手に対して根気強く根拠資料の提出を求めたり、また独自に調査をして裏付けをしていくことが重要です。今回もこれにより相手方の寄与分を大幅に減らすことができました。
また、長男は高校卒業であるのに対して二男と三男は大学卒業であり、両名の大学進学費用が母親から支払われていたことから、二男と三男には大学費用の部分について特別受益があると判断されました。
相続人が複数いる場合、本件のように、
⑴特定の相続人から被相続人に対する生前の援助
⑵被相続人から特定の相続人に対する生前の援助
があったというケースは多数あり、後々揉めることが少なくありません。
このような事情の裏付け資料は年月が経つほど後から取得しにくくなりますので、早めのご相談をお勧めします。