厚生労働省の全国の事業所への調査によると、令和2年9月18日現在で新型コロナウイルスに関連して解雇する見込みがある労働者数は5万9673名。この中にはすでに解雇や雇い止めがなされた労働者数も含まれています。
国の中小企業政策の実施機関の1つである中小機構によると、令和2年7月の時点で、新型コロナウイルスに関する業績影響については、41.3%が大幅なマイナス影響があると答えていました。
自粛や営業期間の短縮等で業績が悪化した企業は増加しており、今後も解雇される従業員の増加が見込まれます。
そこで今回はコロナで業績が悪化した会社が、従業員を解雇できるかどうか、そして、解雇された従業員の対処法を解説します。
【参考サイト:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000674510.pdf、https://www.smrj.go.jp/research_case/research/questionnaire/favgos000000rzfk.html】
コロナで業績が悪化した企業は従業員を解雇可能?
新柄コロナウイルの影響で、企業の業績が悪化した場合の解雇について、法律等で禁じられていません。労働基準法では、業績の悪化によってやむなく敢行する解雇を、「整理解雇」として正当なものであると認められています。
ただし、「新型コロナウイルスの影響で売上がわずかに減った」などの、軽微な理由だけでの解雇は認められません。整理解雇が認められるためには、以下の条件を満たしている必要があります
人員を削減する経営上の必要性があること
前提として、解雇せざるを得ない財務状況に陥っていることが求められます。
新型コロナウイルスの影響で、売上が大きく減少して、以下の様な状況に陥っている場合は、経営上の必要性があると判断される可能性が高いです。
「各種補助や助成金を用いても債務超過の状態で、資金繰りが厳しい」
「借入金の返済が難しく、解雇をしなければ経営が破綻する」
「役員報酬や従業員の給与をカットしても経営が立ち行かない」
解雇を回避するために努力を尽くしていること
整理解雇を行う前に、以下のように解雇を回避する手立てを講じておかなければなりません。
・希望退職者の募集
・役員報酬の減額
・経費の削減
解雇する人員の選定基準と選定が合理的であること
解雇する人員の選定基準や選定が合理的でなければ、整理解雇として認められない可能性があります。合理的な選定基準とは以下のような基準です。
・家族がある従業員より独身従業員を選ぶ
・成績優秀者より、低い成績の従業員を選ぶ
・会社への貢献度を鑑みて選ぶ
解雇する人員に説明や協議を尽くしていること
解雇する従業員に対して、会社側がきちんと整理解雇の必要性について伝えておかなければなりません。従業員が納得していなければ、その解雇は無効と判断されるおそれがあります。
また、解雇する従業員に対して、再就職先を紹介するなどのケアも必要です。
以上4つの条件を満たしている場合、新柄コロナウイルスの影響での従業員の解雇が有効と判断される可能性があります。
新柄コロナウイルスの影響で解雇された従業員 会社と争う権利はある?
コロナを理由に解雇された場合の従業員の対処法を解説します。
コロナが理由であっても労働者の解雇は厳しく制限されている
労働基準法等の労働関係法では、企業による従業員の一方的な解雇を厳しく制限しています。「コロナで売上が低下したから」という理由だけでは、従業員の解雇は認められない可能性があります。
先述したように業績悪化を理由に解雇する「整理解雇」を行うためには、4つの条件を満たしている必要があるのです。
従業員がコロナを理由に不当な整理解雇をした会社に対してできること
整理解雇の4つの条件を満たしていないのに会社から業績悪化を理由に解雇された場合、従業員は「解雇無効」を会社に求めて争うことができます。無効な整理解雇をなされた従業員が会社に対して請求できるのは、以下のいずれかの解決方法です。
・職場復帰
解雇に納得ができず、また同じ職場で働きたい場合は職場復帰を求めることができます。ただし、コロナの営業で店舗が閉鎖されて働く場所がないなど、物理的に戻れない可能性もあります。その場合は、金銭による解決を視野にいれましょう。
・金銭による解決
金銭による解決とは、解雇日から問題が解決し双方が納得した上で退職する日までの給与や、慰謝料等を受け取ることで、一定の被害を金銭によって回復する解決です。
会社側と争う方法
整理解雇が不当であるとして、職場復帰や金銭による解決を求める場合、費用や時間をそれほどかけずに解決する方法として、以下の3つの方法が考えられます。
労働審判
労働審判とは、原則として3回の期日で結果が出る労働問題の解決方法です。最大で3か月程度で結論がでますので、早く解決をしたい方に向いている方法です。
労働審判で、コロナでの解雇が無効であると判断された場合、職場に戻ることができます。また復帰を求めない場合は、和解した日を退職日として、それまでの給与等を受け取ることも可能です。
労働基準監督署や公的機関への相談解雇に納得ができない場合、解雇が不当である可能性がある場合は、労働基準監督署や、総合労働相談コーナーなど、厚生労働省が管轄とする労働者向けの相談サービスも検討してみましょう。
会社側に違法な点がある場合は、公的機関から会社に対して是正するようにと指導がなされることがあります。
弁護士への相談
解雇が違法である可能性が高い場合、会社側が復職や金銭補償等の請求に応じない場合など、新型コロナによる不当な解雇で悩んでいる場合は、弁護士への相談も有効な手段です。
弁護士は個別の状況を把握した上で、解雇の正当性を判断し、無効な解雇である場合には解雇の撤回や金銭補償の実施等を求めて交渉を行います。
新型コロナ関連での解雇で生活に困窮している場合の公的扶助
会社から既に解雇されてしまい、法的に無効であると訴えようにも生活費や訴訟等の費用が手元にない場合は、各種公的支援を検討しましょう。
・住宅確保給付金
解雇されて2年以内の方、休業をして収入が減少している方が、原則3か月、最大9か月分の家賃の補償を受けられる制度です。
東京都の場合は、1か月当たり単身世帯で5万3700円、3人世帯では6万9800円を上限に実際の家賃額が支給されます
・生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例給付
新型コロナウイルスの影響で、失業・休業を余儀なくされて生活に困窮している場合、市区町村の社会福祉協議会から10万円から20万円の貸付を受けることができます。
また、失業や休業等によって生活の維持が困難となっている場合は、単身世帯15万円、2人以上であれば月20万円以内の生活費を最大3ヶ月間借りることができます。
コロナによる解雇でお困りの場合は弁護士にご相談を
新型コロナの影響で不当に解雇をされた場合、解雇の無効を求めるだけでなく様々な公的支援を受けることも可能です。
現在手元に現金がない場合でも、公的支援を受けて生活を立て直しながら、会社に解雇の無効を請求することができますので、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士は、個別の事情に応じて、最適な公的支援策を模索しながら、会社に対して解雇の無効を請求いたします。