1 はじめに
人が亡くなると相続が発生します。残されたご家族間で相続問題が発生しないように、また、ご自身を支えてくれた人に感謝の意図を示すためには、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。
ここでは、ご自身が亡くなる場合に備えておくべき相続のポイントをご紹介します。
2 相続対策を早めに行う
相続を行うとき、遺産の総額がある一定金額を超えると相続税が発生します(相続税については、別の記事でご説明します。)。相続税が発生しないようにするため、また、仮に発生するとしても相続税額を軽減するための一つの方法として、生前のうちから贈与をすることが考えられます。
贈与を行う場合、年間110万円以内であれば、贈与税は発生しません。早いうちから毎年贈与を行うことにより、遺産の総額を減らし、相続税の発生をなくす、または軽減することが考えられます。
3 遺言書を作成する
- 遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密遺言の3種類があります。自筆証書遺言は、自分で作成することができますが、要式に不備があると無効になる可能性があるため、注意が必要です。公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言書で、要式に不備がないため、最も確実な方法です。秘密遺言は、自分で作成し、封印した状態で公証役場に保管してもらう遺言書です。
ご自身にあった遺言書の作成方法を検討するのがよいですが、最もトラブルが生じにくいのは公正証書遺言と言われています。 - 次に遺言書を作成するメリットをご説明します。遺言書があると、遺言者は、遺産の分割方法や、遺産を相続する人を指定することができます。これに対して、遺言書がない場合、法定相続人が民法に定められる法定相続分に従って遺産を分割することになります。
遺言を作成することにより、様々なトラブルを回避できる可能性があります。
例えば、遺言者に別れた配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもも法定相続人になります。しかし、現在の配偶者や現在の配偶者との間の子どもと、別れた配偶者の子どもとの間では、接点がないことが多く、また、感情的に対立する場合もあります。この場合、遺言を残しておけば、トラブルの発生を未然に防ぐことができる場合があります。
また、株式会社を経営し、その会社の株式を持っている方は、遺言で株式を取得する人を決めるのが望ましいです。これを決めないと、相続人間で後継者争いが生じる可能性があります。後継者を指定するためにも遺言書を作成することが望ましいです。
このようなトラブル以外にも、遺言書を作成することにより、あらかじめ取得する財産や取得割合を相続人ごとに指定できるので、相続人間で争いが起きないようにすることが期待できます。 - 1において、生前に贈与をすることで相続税対策になると申し上げました。他方、生前に贈与を行うと、遺産分割協議時に相続人から特別受益の主張がされることがあります。特別受益とは、生前に被相続人から経済的利益を受けた人物が、相続時もほかの相続人と同じだけの利益を受けるとすると、トータルでは生前に贈与を受けた人だけが得することになってしまうため、それを調整する考え(遺産を持ち戻すと言います。)です。
しかし、被相続人の中には、遺産を持ち戻す必要はないと考えている方もいると思います。そのような被相続人は、遺産の持ち戻し免除の意思表示をします。遺産の持ち戻し免除の意思表示は、黙示でも法的には問題がありませんが、争いになる可能性があるため、明示的に行っておくことが望ましいです。また、遺産の持ち戻し免除の意思表示は、遺言書で行う必要は必ずしもありませんが、遺言書に記載してしまうのがわかりやすいです。
4 信託を活用する
5 専門家に相談する
相続は、法律や税金に関する知識が必要となる複雑な手続です。
遺言書を作成する場合、法律的に有効な遺言であること、遺言の内容に疑義が生じないこと、遺留分の侵害による争いが生じないようにすること等、意識しなければならないことが様々あります。このような問題をクリアするためには、弁護士にご相談いただき、また、弁護士に作成を依頼されるのが望ましいです。
ご自身が亡くなった後に残されるご家族がトラブルに巻き込まれないように、被相続人としてできることは様々あります。トラブルを未然に防止するために、あらかじめ弁護士にご相談ください。
以上
【別記事】
相続問題(相続人となる方に向けて)
相続税
相続放棄(家裁の手続と相続しない旨の合意は異なる)