2020.5.20 刑事 新型コロナと刑事罰 新型コロナウイルスの感染を自覚、あるいは感染しているかもしれないと疑いながら歩き回り、感染を広げてしまう危険のある行為を行うことは、何か刑事罰に問われるのでしょうか。 まず、傷害罪に当たる可能性は低い、ということになるかと思われます(なお、前提として、他人に病気をうつす行為は傷害罪に当たることがあります)。 理由を簡単に言えば、因果関係の立証が不可能に近いからです。 感染経路を推測することはできても、法的な証明というレベルで限定することは事実上不可能です。おそらくは、このルートだろう、ということはいえても、明白にこの人からうつされた、というレベルでの証明ができないのです。判例で傷害罪が認められている事案における病気は梅毒であり、ある程度感染経路が特定できたという特殊性があります。 次に、威力業務妨害罪にあたるか、といえば、暴力等を用いない限りは当たりません。もちろん、大声を出して自分はコロナだと騒いだりすれば同罪が適用される可能性が高いでしょう。 偽計業務妨害罪についても、積極的に騙す行為がないので、成立するか微妙です。逆に、自分はコロナに感染していないのに、コロナに感染していると発言したり、インターネットに書き込んだりすることはこちらの犯罪に当たる可能性があります。 以上を踏まえると、ただ動き回っただけの人を刑法犯として処罰することは難しいのではないかと思われます。あとは立法的に解決するしかないでしょうが、刑事罰を伴う移動制限をかけるというのは重大な人権の制約になりますから、慎重な検討が必要です。 前の記事へ 次の記事へ