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雇用と請負の違いについて
近年、個人の働き方は多様化が進んでおり、選択肢の幅が急速に広がっています。
実際の働き方は色々とありますが、この回では「雇用」と「請負」という二つの働き方を取り上げ、両者の違いについて見ていきたいと思います。
最大の違いは人に雇われるか、雇われないか
細部の違いに言及する前に、まずはイメージ的に雇用と請負の大枠の違いを捉えておきましょう。
「雇用」とはすなわち人を雇うことですから、雇われる側は「被雇用者」となって仕事に従事します。
一方、「請負」は仕事を請け負うという意味ですが、請負形態で働く場合、誰かに雇われるわけではありません。発注者が仕事を依頼し、その仕事の完成を受注者が請け負います。請負の代表例としては家屋の建築やホームページの作成、デザイン制作などがイメージしやすいでしょう。
雇用形態で働く場合、会社と従業員の間では雇用契約や労働契約が結ばれますが、請負形態で働く場合は発注者と受注者の間で請負契約や業務委託契約が結ばれます。
次の項では雇用と請負でどんなところに違いが出るのか見ていきます。
雇用と請負でどんなところに違いが出る?
指揮命令を受けるか
雇用形態で働く場合、会社の指揮命令の元に仕事に従事することになります。
実際には、自分の上司からの指示を受けて与えられた仕事をこなしていくことになると思いますが、仕事の進め方について被雇用者には基本的に自由はなく、会社が指示する進め方に従う必要があります。
請負形態で仕事をする場合、契約上である程度の条件を付けられることはありますが、基本的には仕事の進め方を受注者側の裁量で決めることができ、発注者から日常的な指揮命令は受けません。
例えばマイホームの建築を依頼された場合、請負契約に従いつつ、受注者は自らの経験と知識を基に、使いやすい道具や工具を自分で準備して、自らの裁量で家屋の完成という仕事をこなしていきます。
時間を拘束されるか
雇用形態で働く場合、一部を除いては時間的に一定の拘束を受けます。
例えば、休憩時間を除いて朝8時半から夕方五時までは会社で労働に従事することなどが求められます。こちらは会社勤めをしたことがある人ならば想像は付くでしょう。
一方、請負で仕事を受注する場合は上記のような時間的な拘束は受けません。
例えばホームページの制作を請け負った場合、一日何時間働くか、何時から何時までを業務時間に充てるかは受注者側の裁量に任されます。
ホームページの制作という仕事を完成することが任務であり、そのためにどれだけの時間を費やすかは発注者からの拘束を受けません。
仕事を拒否できるか
雇用されて働く場合、基本的には法令に違反するような指示でなければどんなに嫌な仕事であっても拒むことはできません。
その代わり仕事をこなす限りは給料が保証されます。しかし請負の場合、理由の如何に関わらず受注を拒否することができます。
単に自分に合わない仕事だという理由で受注を拒むことも自由ですし、仕事の対価が安いなど条件が合わないから断るということも当然できます。
例えばデザイン制作の仕事であれば、洋服のデザインは得意だから請け負うけれども、その他の素材は興味がないので引き受けないといったことも全く問題ありません。
ただしその場合は当然報酬を得ることはできません。
労働関係法令の適用があるか
雇用形態で働く場合、人を雇用する企業側と働き手となる従業員は各種労働関係法令の適用対象になります。
以下で代表的なものを見てみましょう。
労働基準法
仕事に従事する時間など、労働条件の設定について規制します。
雇用保険法
労働者が失業した際などに必要な給付を行うことで、生活や雇用の安定を図ります。
労働者災害補償保険法
業務中や通勤途中などに災害に合った場合に保険給付を行うことで、社会復帰を支援します。
最低賃金法
労働者に支払うべき賃金の最低額を定めることで、生活の安定を図ります。
etc...
基本的に労働関係法令は、立場が弱くなりやすい労働者(被雇用者)が不当に虐げられないように、また仕事を通して安定した生活を維持できるようにする性質を持ちます。
その点請負で働く場合、雇用関係が生じないため労働関係法令の適用はありません。
その代わり、請負の場合は発注者が優越的な地位を背景に、不当に代金を減額したり、支払いを遅らせたり、あるいは返品するなどして受注者をいじめるような行為を規制するため、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」など別の法令が用意されています。
福利厚生を受けられるか
雇用形態で働く場合、会社が任意で用意する福利厚生の恩恵を受けることができます。
例えば家賃の補助や交通費の補助、家族手当などが支給されることがあります。最近は優秀な従業員を確保するため、健康増進やエンターテインメントなど多方面の福利厚生を用意する会社も増えているようです。
雇用形態で働く場合、自分に合った福利厚生を用意する会社を選んで就職するということもできます。一方請負形態で働く場合、発注者となる企業に雇用されるわけではないので福利厚生を利用するということはできません。
まとめ
この回では雇用と請負の働き方の違いについて取り上げて見てきました。
本章の内容をまとめてみましょう。
雇用 | 請負 | |
---|---|---|
人(会社)に雇われるか | 雇われる | 雇われない |
指揮命令 | あり | なし |
時間の拘束 | あり | なし |
仕事の拒否 | できない | できる |
労働関係法令の適用 | あり | なし |
福利厚生 | あり | なし |
最大の違いは、雇用形態で働く場合は人(会社)に雇われますが、請負では雇われないということです。両者には他にも本章で見てきた違いがでますが、全体を見ると以下のような性質が見えてきます。
- 雇用形態:安定して働くことができるが、勤め先に拘束され、自由度は低い
- 請負形態:基本的に取引相手に拘束されず自由度は高いが、不安定な働き方となる
人によってどちらの働き方が性に合うかは異なります。安定を優先するか、それとも自由を優先するか、あなたはどちらの働き方が合いそうですか?